ゆらゆら "初子さん" 2025年6月24日

ゆらゆら
@yuurayurari
2025年6月24日
初子さん
初子さん
赤染晶子
『ジャムパンの日』が最高だった赤染さんの小説集。表題作は、厳しく辛い日常を、それでもミシンがひと針ずつ進むように地道に暮らしてくしかない人々の日々を描き、特に母と母を見る初子さんの姿が心に残る。一方、美根子さんのようにしか生きられない人もいるなあと思う。 「うつら・うつつ」は、「乙女の密告」に通じるシュールな笑いの要素が散りばめられつつ、京都の劇場のぬるま湯、マドモアゼル鶴子の夢、小夜子のほっちっちー、パリ千代…と一読では何が何だかわからないけど、窒息しそうな日常を“言葉”を求めて抜け出そうともがくようで、凄いものを読んだ気がする。 「まっ茶小路旅行店」は、同じく日常からの脱出についての感覚を描いてる気がして、「うつら・うつつ」の変奏曲という印象を受けたけど、発表順を見たら、むしろ逆なのかも。でも、どの作品でも、赤染さんの描く京都の“日常”に住んでみたい気がする。 (25.5.10読了)
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