ユメ "それでも世界は回っている 1" 2025年6月14日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年6月14日
それでも世界は回っている 1
もう二度と手に入らなくなってしまったかもしれないインク〈六番目のブルー〉を探して、オリオは異国へと旅に出る。私は万年筆やインクが好きなので、「この世でいちばん深い海の底の青色」である〈六番目のブルー〉には心が躍り、そのインクを追い求めるオリオの奇妙な旅路を夢中になって読んだ。 作中で、登場人物たちはしばしば「それでも世界は回っている」という言葉を口にする。どんなに辛く悲しいことがあっても、それでも世界は回っている。その事実はある意味残酷でもあるかもしれないが、同時に生きてゆくために背中を押してくれるようにも思う。吉田篤弘さんの『小さな男*静かな声』という小説が大好きなのだが、その作中に出てくる〈そして、人生はつづいてゆく〉という一文をふと思い出した。それでも世界は回っている。そして、人生はつづいてゆく。篤弘さんの作品を象徴するような言葉だなと勝手に思う。 電球交換士のトビラや〈マリオ・コーヒー〉のマリオといった懐かしい人物も顔を出し、『電球交換士の憂鬱』や『台所のラジオ』を読み返したくなる。篤弘さんが紡ぐ物語の世界の繋がりを辿ってゆくのは、いつだって楽しい。
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