本屋lighthouse "失われた時を求めて(3)" 2025年6月25日

失われた時を求めて(3)
失われた時を求めて(3)
マルセル・プルースト,
吉川一義
最近はなにを読んでもプルーストの気配を感じてしまうので、ここらでモノホンのプルーストをかまして幻影を断ち切ろうと考えたが、栞が挟まってはいるもののどこまで読んだか正確にはわからなくなってなんとなくで決めた改行のところで、はやくもプルーストをくらった。 私は家に帰った。私がすごしたのは老人の一月一日だった。その日に老人が若者と区別されるのは、もはやお年玉をもらえないからではなく、老人がもはや元旦など信じていないからである。私もお年玉ならもらったが、それは私を喜ばせてくれたはずのただひとつのお年玉というべきジルベルトの手紙ではなかった。それでもまだ私が若かったのはジルベルトに手紙を書けたからで、その手紙で私の愛情の孤独な夢を語ることによって相手の心にも同じ夢がかきたてられるものと期待したのである。年老いた人の悲哀は、効果がないのを知ってそのような手紙を書こうとも思わないところにある。(p!141-142) 確か『突囲表演』ではX女史にメロメロになった何者かがキテレツな手紙を書いていた気がする。X女史はジルベルトなのかもしれない。
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