真魚
@ms_mn
2025年6月25日

ギリシャ語の時間
ハン・ガン,
斎藤真理子
読み終わった
恋人を目にしたマルケスと、弟子を口にしたソクラテス。
古代ギリシア語では美しさと厳しさと高潔さ、静けさは同じ単語だった、韓国語で光=明るさと色彩とが同じ意味であるのと似て、というエピソードのように、記憶のどこかに静かに沈んでたまに戻ってきそうな、物哀しく冷たいけれど印象的な描写がたくさんあった。
吐き気が止まらない時期もあったし、(遺伝ではなくおそらく失明はしないはずだけれど)目がものすごく悪いしどんどん暗い場所が見えなくなっているので、シジュウカラの場面はリアルに怖かった。
死んだ言語と生きている言語、言語と社会、言語と感受、表象とイメージ、といった哲学的な問いがふたりの人物のモノローグを中心に漂っていて、無意識の意図に見えるというか、判別しきれないような方法で構成されている。
“明るくも暗くもあって、少しぼやけている"というのがしっくりくる読後感でした。
