
JUMPEI AMANO
@Amanong2
2025年6月27日

生き物の死なせ方
渡邉悟史
まだ読んでる
就寝前読書
お風呂読書
第4章の主役は昆虫。1970年代の日本で展開されたという「昆虫採集論争」、特にその「擁護論」が検討される。
ここでの「昆虫採集」とは捕獲から標本づくりまでを指すため、「昆虫採集論争」とはすなわち、〈昆虫を殺してもよいのか、殺してもよいとすればそれはどういう場合なのか、果たして殺すことで得られるものはあるのか〉(109頁)という論争であったという。
〈本章で取り上げる七〇年代というのは、いよいよ本格的に、標本が単なる死体と見られ、採集が不道徳な「殺し」、そして標本が単なる「死体」として考えられた時代である。[...]昆虫採集が「罪悪視」されるようになっていったのだった。〉(117頁)
これに対し、資料調査の対象として取り上げられる『月刊むし』上で展開された〈主張〉や「虫屋」というアイデンティティの批判的検討が興味深い。
〈『月刊むし』の主導者たちはこの二つの死の意味づけの間を行ったり来たりした。[...]本書で注目したいのは、両極端に見える政治的正統性の論理にせよ、社会的には無意味という趣味の論理にせよ、いずれも昆虫の死体の持つ人間への共振性をコントロールしようとした結果から導き出されたということである。〉(148頁)
「おわりに」で提示されるあり得たかもしれない別様の可能性がなんともいえない読後感を醸し出している。「すっきりおわらない」のがこの本のいいところだな、と改めて思う。
普段読まない分野だから、知らない話ばかりで面白かった。

