
K
@weitangshaobing
2025年6月28日

BUTTER
柚木麻子
読み終わった
【ネタバレにならない好きなところ引用】
日本女性は、我慢強さや努力やストイックさと同時に女らしさと柔らかさ、男性へのケアも当たり前のように要求される。その両立がどうしても出来なくて、誰もが苦しみながら努力を強いられている。でも、あなたを見ているとはっきり、わかるんです。そんなもの、両立できなくて当たり前だって。両立したところで、私たちは何も救われないんだって。いつまで経っても自由になれっこないんだって(p.132)
壁を築くとは何も肩をいからせ、他者を拒絶することではない。一人の作業に没頭し、おのれの砦を守ることではないだろうか。壁の素材は硬いレンガや冷たいコンクリートではなくても構わない。甘く柔らかいお菓子だっていいのだ。(p.187)
どんな境遇であれ、少しでも快適にしようとする女の知恵、自分好みに環境をカスタマイズできる女の逞しさを、保守的な男ほど疎んじるものだ。でも、それこそが彼らが女になによりも求める家事能力の核に他ならない。どうしてその矛盾に気づかないのだろう。家庭的な女でさえあれば、自分たちを凌駕するような能力を持たない、言いなりになりやすい、とどうして決め付けているのだろう。家事ほど、才能とエゴイズムとある種の狂気が必要な分野はないというのに。(p.312)
「あなたが一体全体、どんな奇行をやらかしたのかと思ったら、あの女、ただ太っただけだっていうのよ。心配で仕方がないんだ、って。あなたが太ったから、もう世間の常識みたいなところから離れてしまったんだ、って。他人の体型が変わっただけでよくもまあ、あれだけ心を乱せるわよね。どいつも、こいつも……。どれだけ他人が気になるのよ? 他人の形がどんなふうか、他人がその欲望を開放しているかしていないか。そんなことで不安になったり優越感を持ったりするなんて、異常だわ。他人の形が、自分の内側で起きていることよりも、ずっとずっと気になって仕方がないっておかしいわよ」(p.286)
