
りおかんぽす
@riocampos
2025年6月28日

去年、本能寺で
円城塔
読んでる
第1章「幽斎闕疑抄」
タイトル通り、古今伝授でお馴染みの細川幽斎が主人公。物語の舞台は史実における「田辺城の戦い」の場面そのまま。田辺城(現在の舞鶴市にある。調べると、江戸以前の地名は田辺で、明治になり山城や紀伊の田辺と区別するため地名を城の姿に因んで「舞鶴」としたとか)に隠居している幽斎67歳、しかし何故かAI、しかも軍事AIにして文事AI。(そういえば文事ってあまり使わない単語だね。なお反対語は武事。)
古今伝授やAIについてはいろいろと本文中に軽く解説あるものの、勾配消失問題(多層のニューラルネットワークで新規情報を学習しなくなる弊害)だのシグモイド関数(0周辺で0から1に変化する関数)だのReLU(Rectified Linear Unit: 正規化線形関数。正の範囲で入力をそのまま出力する関数。ダイオードの理論的ふるまいに相当。勾配消失問題の解決に用いられる)だの、断りなく用語を使ってくるところなどに苦笑。もしかするとこのAI歴史短編集?の導入として「はいこの本は技術用語をバンバン使うからねー」という予告だったりするのだろうかと思ったり。まあだいたい分かるので笑うだけなのだがw
それはともかく。
「軍事AIも…罪の意識にさいなまれ、仏や耶蘇に救いを求める」
という文には前作「コード・ブッダ」を思い起こさせてくれて微笑んでしまった。
それからこの本ではフリガナの使い方が楽しい。例えば「古今和歌集」に「コレクション・オブ・ジャパニーズ・ポエムズ・オブ・エンシェント・アンド・モダン・タイムス」なるフリガナが振ってある。…確かに英語にすればその通りなのだろう(Wikipedia英語版「古今和歌集」にも"Collection of Japanese Poems of Ancient and Modern Times"とある)。ところで田辺にタナベ、丹波にタンバ、あと人名にもフリガナ振ってるのはどういったニュアンスなのだろうか。日本では無いという雰囲気作りなのかな。
余談:「幽斎闕疑抄」の闕疑について辞書で調べると
「けつ‐ぎ【闕疑】
〘名〙 (「論語−為政」の「多聞闕疑、慎言其余則寡尤」による語) 疑わしいものとして、決定を保留しておくこと。また、そのような事柄。細川幽斎(藤孝)著文禄五年版本「伊勢物語闕疑抄」のように書名に用いることがある。」(精選版日本国語大辞典)
とある。幽斎が書いた本の題に因んでいるというところも要点なのか…わかんねーよそんなのwwと思ったのでした。
今後こんなに長文で書くかどうか分からないけど、まあ1つ目なので勢いで。


