橋本吉央 "責任と物語" 2025年7月1日

責任と物語
責任と物語
戸谷洋志
『訂正可能性の哲学』と、自分としてのテーマである「人と物語の話が重なっている気配を感じたので読んでみた。哲学の流れの中で自由意志や決定論から始まる議論は、なるほどそういう文脈もあるのかと思ったが、それほど興味をそそらなかった。 ハンナ・アーレントを引いて「許し」と「約束」の考え方を、物語と訂正可能性に結びつけて論じたパートは面白かった。許しによって、物語から生まれる多様な影響を包摂しつつもそれを終わらせられること、約束によって、物語が進んでいく道筋をつけられること、というのは、「世界は自分の思い通りにはならない」ということで思考停止しないための推力になる感覚。 変わるものと変わらないものの考え方として、ラカトシュの「リサーチ・プログラム」というフレームワークを導入していたのも面白かったが、そういう考え方がすでにあるよというだけで、「まあそりゃそうだよね」という感じもするなあ、とは思う。 タイトル通り「責任と物語」というのは興味深いテーマなのだけれど、同じ責任というキーワードを扱う『<責任>の生成』に比べると、やや机上論的であったかなと思う。同列に扱うべきなのかどうかはわからないけど。
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