蛸足配線
@nekoai30
2025年6月10日

婚約
倉橋由美子
読んでる
愛しあうためにはある種の才能が必要だ……Lにとっては、それは想像力なのではなく、むしろ乏しい通俗的な想像力に肉体による精妙な表現を与えることでなければならなかった。(P22)
『鷲になった少年』を読んだ。1960年代の空気が色濃い、エロティックな短編。観念的なエロスがまばゆく目が眩むようだが、それらすべてを踏みにじるかのように、肉の交わりは常に具体的で物理的だ。「変身」「少年」などのモチーフがギリシャ神話を想起させる。主人公が自身をアフロディテに、少年をアドニスに喩える一節にも同様のイメージがうかがえる。「生贄の肉」として捧げられるLの肉体にも。

