
ヒナタ
@hinata625141
2025年3月2日

藍を継ぐ海
伊与原新
読み終わった
自然科学に絡めた多彩な物語であることのオリジナリティの強さはもちろんだけど、どの短編も地方を舞台にしてるのがすごくよかった。音もなくゆっくりと衰退していく、そして自然豊かな地方こそ日本そのものだなと気付かされる。
徳島の姫ケ浦、北海道の遠軽町、奈良の東美野村、萩の見島、長崎と、物語の舞台が日本の地方あちらこちらで、名前だけ聞いてもピンとこないから検索しながら読んだ。ひとくちに地方と言ってもそれぞれに美しい自然と長い歴史がある。アイヌをはじめ原住民へのリスペクトを感じられたのも良かった。
個人的には長崎の被爆についての物語「祈りの破片」が刺さった。地元が近いということもあるし、浦上天主堂の話なのでドラマ『海に眠るダイヤモンド』の百合子のことも思い出しながら読んだ。被爆した化学教師と偶々被爆から逃れた神父、まるで正反対の二人の記録から見える収集の作業はまるで祈りのようで哀しくも美しい。
伊与原先生の小説は『宙わたル教室』と本作しかまだ読めてないけど、安心して読めるなーと思う。誠実。他者へのリスペクトが物語の根底にちゃんとある。過去作も追っていきたい。

