ミオReads "水車小屋のネネ" 2025年7月5日

ミオReads
ミオReads
@hanamio03
2025年7月5日
水車小屋のネネ
水車小屋のネネ
津村記久子
続きが気になって早起きしたの久しぶりだ。 生きているわけではなく死んでいないだけという人が、自分の未来は特に見ていなくとも「だれか自分以外の人の未来がうまくいくといいと思った」瞬間に、未来を思えてうれしかった、しかもそれが「転職先でうまくいきますように」という、言ってしまえば「生きている」人間には普通を思うことで、でもそこに真剣な祈りや願いがあることに、その発見にうち震えるような喜びがあった。人が希望を持つ瞬間に立ち会えることが、たまらなく嬉しかった。 「誰かに親切にしなきゃ、人生は長く退屈なものですよ。」 そうなのかもしれない、と40年をかけて読ませてくれた。してもらうだけではなく、してもらったことを受け渡したくなる、そういう時間と視野と人生の余力が、10年ごとに変わっていく。 そしてずっとネネがいる。 困ったり、弱ったり、死んでいないだけになったり、そういうときになんとか転がり込んで歌い喋り踊りコミュニケーションを取るヨウムの姿にぼう然として、ネネにとって自分が当たり前になるぐらいまでぼう然として、それからまた、自分の足でネネの水車小屋から出て行く。 「またねっ!」 そう言ってくれるネネがいるから、自分の足で出て行ける。 素晴らしい物語だった。読めてよかった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved