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@bunkobonsuki
2025年7月5日

砂の女(新潮文庫)
安部公房
文学者の中で最初にワープロを使ったとされるほど、テクノロジーに関心を寄せていた作家、安部公房。「砂の女」は、彼の代表作である。
本作で安部公房は表現に対する貪欲な姿勢を見せる。物語の最後には「主人公はいまだに見つかっていない」という事実を、公的文書の体裁を用いて表現している。たった二枚の文書だけで、作品そのものの印象を際立つものにした。
安部公房は多彩な比喩が世界的作家の所以とされるが、その根幹には、文章にとどまらない表現自体に対する造形の深さがある。


