CandidE "ジェイムズ" 2025年7月5日

CandidE
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@araxia
2025年7月5日
ジェイムズ
ジェイムズ
パーシヴァル・エヴァレット,
パーシヴァル・エヴェレット,
木原善彦
ああ、なるほどね、そりゃ映画化の話も出ますよね。という読後感。最後の場面はスクリーン映え間違いない。 ただ正直、世間の高い評価と私の体感には少しく温度差が残った。 ーーー 「パパ、どうしてこんな勉強をしないといけないの?」 「白人は私たちが特定の言葉遣いをすることを期待している。その期待に背かないことが大事なんだ」と私は言った。「私たちが犠牲になりさえすれば、あの人たちは劣等感を覚えずにすむ。というか〝あの人たちは優越感に浸れる〟ということさ。さあ、手始めに基本的なことを復習しようか」 ーーー ジムの語りが原作世界の裏舞台を暴き、大胆に換骨奪胎していく感じは実に面白く、またビターで味わい深いものの、「そのポリティカルな仕掛けに、ハック・フィンの世界線を借りる必然はあった?」という疑問が終始チラついた。 それは原作における行き当たりばったりの粗さと、本作の実験的な試みによる粗さとが異質で噛み合わず、なんだか同期していない印象を受けたことが大きく、その影響もあって、私は最後まで小説世界に馴染めないままでいた。 以上から、『トム・ソーヤの冒険』から『ハックルベリー・フィンの冒険』へと丁寧に準備を重ねてきたつもりの私の超個人的感想としては、この『ジェイムズ』という作品は、冒頭から原作とは全く別の世界線のジム譚として割り切って読むほうがしっくりくるように思われる。 さらに物語世界を補完する上では、訳者あとがきにあった柴田元幸編著『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒けん』(研究社)を事前に読んでおけば、なお良かった、とも思った。 とはいえ、映画『ジェイムズ2』は、ぜひ観たい(笑)
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