
もん
@_mom_n
2025年7月7日

がらんどう
大谷朝子
読み終わった
心に残る一節
@ 自宅
すばる文学賞の受賞作が発表された時からずっと気になっていた作品が文庫化されていて、時の流れの速さに驚きつつ一気に読む。作品全体の不穏な空気感も津村さんの解説もよかった。
p.22
わたしは、普通じゃないことを選ぶのが怖い。なるべく地味で、目立たないでいることは楽だし、そうやって過ごすのにわたしの性質も見た目もぴったりだと思っていた。
p.72
身体から一切の力を抜いた。重力に任せて、指先まで意識を研ぎ澄ます。ベッドに横たわったまま、ぴくりとも動かさない。わたしは、時々こうやって死んだふりをする。
p.109
わたしの赤ちゃん。がらんどうで、歪で、できそこないの。それは、わたしにぴったりなような気がした。わたしの腕の中に、こんなにもすっぽりと収まるのだから。