あずき(小豆書房) "シシになる。" 2025年7月8日

シシになる。
そこでは、人も動物も幽霊も区別しない。 岩手県遠野市。かつて一人のよそ者としてこの地を訪れ、見えないものたちの世界を『遠野物語』として世に出した柳田國男が"戦慄"したというシシ踊り。 この本の著者は、遠野のことも、遠野物語のことも全く知らなかった一人のよそ者で、地元をよく知る人たちに地域を案内してもらう様は、かつての柳田と同じ構図だ。そして、シシ踊りと邂逅する。 シシ踊りとは、シシとは、一体何なのだろう。移り住んで10年。シシ踊りと遠野物語に向き合い、没入し、書ききったであろう一冊。 人間が主観的に動物になる。しかも色々な動物のパーツをハイブリッドに混ぜたキメラのようになる。鹿は神の使いであり、田畑の害獣でもある。 共存する。 身体を通してシシを踊り、内なる野生が万物と共振する。 「誰もがシシになれる」 祭りや芸能は、言葉や文字ではない形で他者と繋がるメディアのような役目をもつのだと思う。 祭りのある地域の方や、他の土地から移り住んで地域の祭りに参加するようになった、という経験のある人なんかも、きっと胸が熱くなる一冊だと思います。
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