
CandidE
@araxia
2025年7月9日

赤と黒(上)
スタンダール,
野崎歓
読み終わった
訳は悩んだけれども、2025年だし光文社で。異論は認める。
それにしても、なんなの、この思考と感情の揺れを、速度を伴って丁寧にいじり倒す技術。びっくりした、すんごい。情動のフレームレートが圧倒的に高く、主人公と取り巻きの虚栄、欲望、自意識、愛、野心が秒単位でめまぐるしく変化する。そのたびに気持ちが激しくシェイクされる。感情のメリーゴーランド、喜怒哀楽のジェットコースター。濃厚だし、熱量が半端ない。やばいやばい、通常の読むスピードでは危うく読書が処理落ちしかかる。ドストエフスキーのあのターン制は、実は超親切設計であったと知る。
それに、ちょくちょく顔を出すスタンダールの毒気たっぷりのツッコミがめちゃくちゃ冴えていて、何度も笑う。面白い。
さらに、本書を読んだことで、ようやく自分の中でナポレオン主義がすっと腑に落ちた。しっくりきた。これが収穫で、とてもラッキーであった。万が一『罪と罰』を読み返すなんてなことがあったらば、その味わいはマシマシかも知らない。
兎角、いろいろ面倒くさいし煩わしいのだが、それも魅力。やめられない止まらないで下巻へダイブイン。


