
amy
@note_1581
2025年3月10日

PRIZE-プライズー
村山由佳
読み終わった
感想
村山由佳先生の『PRIZE』超~~~~おもしろかった。おもしろくないところが一行たりともなくて、そんなことある!?ずっとおもしろいけど!?と思いながら読んでいた。主人公の天羽カインの描写が容赦なくて、読んでいる人によっては相当ヘイト感情が溜まったんではないのかなーと思う。
村山先生は人間の、眉をひそめたくなるような欲望や振る舞いを描くのすっごい上手でざらっとしてるんだけど、読み進めていくとそこが人間臭さというかその人物の愛おしくなるポイントになっていたりして、その話の運びや人物に抱く読者の感情のコントロールがすごいなあ。村山先生が意図してやっているのかはわからないけども。
あと悪意を持った人間の視点を描くのも絶妙に”イヤ~”なところを突いてくる。ロレックスの腕時計への眼差しのところとか。そいつに嫌な感情持ってないとそこは目につかないだろ!みたいなところを描くんだけど、すごい、好きなんですよね。村山先生のそういう描写のセンスというか配置がね……。
天羽カインの担当である編集者の緒沢の行動については、なんというか今話題の推し活というか推しへの”信仰”みたいなのを感じた。
これは私の個人的なことなのだけれどちょうど読んでいるタイミングで岡本喜八の『日本のいちばん長い日(1967年)』を見た。内容はすでに知っている人も多いだろうけれど、そのなかに玉音放送を阻止したい終戦反対派がそれまで信奉していた天皇にすら自分たちの意思にそぐわない害をなそうとする。
自分の信仰していた人や物が自分のなかにある信仰から外れたことをしようとしたとき、それを矯正しようとする。
そういう動きがある。芸能人に対して恋愛が発覚すると非難するファンにも同じものを私は感じるし、それを編集者の緒沢にも感じた。自分のなかに強固にある”こうあるべきだ”から外れることを受け入れられない。そうしたいという意思を天皇や芸能人や天羽カインが持っていたとしても受け入れられない。信仰に呑まれてしまっている。
そこからのラストシーン、天羽カインの作家としての姿は作中ずっとざらざらとした手触りだった空気を一層して清々しさに満ちていて、あの始まりからここに連れてきてくれるのか!と衝撃だった。私はこういう読者を物語のはじめから最後にかけて遠いところまで連れてきれくれるような話が大好き。本当に読めてよかった。単行本も買ったけど文庫も解説が楽しみなので買いたい。
そしてみんなやってると思うけど実写化するなら天羽カイン誰にやってもらいたいかっていう話をしません!?!?!?私は菅野美穂さんがいいです!!!あと天羽カインにずばっと言う女性作家は筒井真理子さんで!!!お願いします!!!



