H.A.B(エイチアンドエスカンパニー) "プルーストを読む生活" 2025年7月10日

プルーストを読む生活
柿内正午さんの『プルーストを読む生活』を重版しました。うっかり『失われた時を求めて』全10巻セットを買ってしまった著者が、その読了まで、関係ない本ばかりを併読しながら読了まで毎日綴った読書日記です。 本日記は『失われた時を求めて』を読んでいる、というだけで、解説書でも、読書記録でもありません。むしろプルースト以外の本を大量に読み、仕事に疲弊し、悩み、気を紛らわせ、本が読めないと嘆き、そしてまた本を読む。そうした、普通の日々を、毎日の日付とともに読了ページ数が表示される『失われた時を求めて』に寄り添われるようにしながら書き続けられた、ただただ読書は楽しいなあと、そんな気持ちになる約一年間の日記です。 どうやって見つけたのかよく覚えていませんが、webブログで更新されていた日記を毎日楽しみに読み、文学フリマで同日記のzineが出るというのでうきうき買いに行き、当時運営していた自分の書店で仕入れてたくさん売ったのち、原価の関係で個人での重版が難しく品切れになってしまったので、では当店から出しましょう! ということで生まれたのが本書です。 柿内さんとは、先の文学フリマが初対面だったと記憶していたのですが、重版するために先日、同日記を読み返したところ、その前に友田とんさんとぼくのトークイベントに柿内さんが来てくださって、その翌日に当店にも来た(行った)、という事が書かれていました。たしかに、スパイスの袋を手に下げた柿内さんが店に来たことは覚えている。何度も読み返しているのに、記憶は簡単に都合よく解釈されてゆくもので……。 でも不思議と、柿内さんがどの本を買って、当時どういうことでわいわいしていたかはちゃんと覚えていて、本の内容ではなく、読書をしていたそのときの記憶がわあっと蘇ってくる喜びが、再読にはありました。本にまつわる個人的な記憶は、いつでも誰でもどの本でも、心地よく大切に仕舞われてゆくものなのだと思いますし、だれかのそうした記録を読むことで、自分自身の思い出が広がってゆくということが、本を読むことの中にはあるのでしょう。 何がいいたいかというと、日記も読書もとても楽しいものですねということで、本書はそうした気持ちが768頁続く、誰かにとっての良い読書の時間になるといいな、と願うような本になっています。
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