
直線
@hrv8k
2025年7月11日

氷点(下)
三浦綾子
読み終わった
上巻に引き続き。夏枝の自己愛の強さによって正当化される行いの数々、無知で幼かった二十代と比べて年齢とともに粘度を増す執念深さや凄みのようなものが印象的ではあるが、彼女は啓造に比べ驚くほど狭い世界で自身の美貌を評価され生きてきた人物であるので、献身的で愛情深い母親という同時に存在する別の面も相まって、哀れな人物のようにも思う。
清廉潔白であった陽子は、成長するにつれて他者への嫌悪感や嫉妬、猜疑心といった激しい感情を自身にみとめ困惑する。
誰もが羨む理想的な家庭、人物においても、抗いがたい負の感情や劣情が存在し、またどのような人生であっても向き合うべき罪があるのだろうか。
読んでも読んでも、新しい気持ちでまた読んでしまう。