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@hrv8k
- 2025年7月11日氷点(下)三浦綾子読み終わった上巻に引き続き。夏枝の自己愛の強さによって正当化される行いの数々、無知で幼かった二十代と比べて年齢とともに粘度を増す執念深さや凄みのようなものが印象的ではあるが、彼女は啓造に比べ驚くほど狭い世界で自身の美貌を評価され生きてきた人物であるので、献身的で愛情深い母親という同時に存在する別の面も相まって、哀れな人物のようにも思う。 清廉潔白であった陽子は、成長するにつれて他者への嫌悪感や嫉妬、猜疑心といった激しい感情を自身にみとめ困惑する。 誰もが羨む理想的な家庭、人物においても、抗いがたい負の感情や劣情が存在し、またどのような人生であっても向き合うべき罪があるのだろうか。 読んでも読んでも、新しい気持ちでまた読んでしまう。
- 2025年7月8日氷点(上)三浦綾子読み終わった縁あって幼い頃に出会い、手放したり購入しなおしたりを数十年に渡って繰り返している。 初めて読んだときは、年齢の近いルリ子に気持ちを寄せていた。次第に自分が成長し、視野が広がり、言葉の意味や複雑な感情を理解できるようになるにつれて、少しずつ他の人物像が見えるようになっていった。 脳裏に広がる厳しい北海道の冬の情景、行きつ戻りつする人びとの心、狡さや未熟さなどの描写が見事で、何度も読み返す価値のある作品だと思う。
- 2025年6月27日番犬は庭を守る岩井俊二どのような心持ちで捉えるべきか戸惑い序盤で挫けそうになりながら読んだ。 次第に戸惑いが和らぐとともに、この不遇な青年の物語がどのように締めくくられるのか が気になりだし、奇妙な人生の終わりの示唆と連なる命にほのかな満足を得た。
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