
ゆい奈
@tu1_book
2025年1月31日

晩年改版
太宰治
読み終わった
「死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目が織りこまれていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きようと思った。」
太宰の弱きものへの手の差し伸べ方がすきだな。弱さを知っているひとにしかわからない、やさしさ。
第一作品集にして『晩年』とつけられた小説集は、太宰が遺書として残したものであるためか、ちかくに死があった。しかし同時に明るいものも存在し、不思議なかんじ。太宰作品では中期の明るめの作風が好みなのだけどわりに初期作品も好きなのかも。とくに『ロマネスク』。報われようの無さに哀しみを抱きつつもカラッとした最後は妙に明るく笑顔になれる。ふ〜ん、なんかあれだけど、みんなよかったやん、みたいな気持ちになって、よかった。
しかし頭に残っているものは『思い出』『道化の華』でなんだかずっと泣きだしたい気持ち。一粒も涙はでなかったけど。太宰についてのことを調べたからこそ、お〜〜知ってる知ってる、なるほど、みたいな、私小説の魔力にすっかり踊らされてしまって、気持ちよかった。背景を知れば知るほどおもしろくなる、きっと知らなくてもおもしろいのだろうけど。ともあれ、『道化の華』で入水自殺し、死んでしまった彼女の最後の言葉、太宰はきっと生涯忘れられなかったのだろうな。いや、私小説だし、なにもいっていないのかもしれない、いやわからん、踊らされている。










