
読書猫
@bookcat
2025年7月14日

君のクイズ
小川哲
読み終わった
(本文抜粋)
“僕は当たり前の前提に気がつく。
クイズに正解できたときは、正解することができた理由がある。何かの経験があって、その経験のおかげで答えを口にすることができる。経験がなければ正解できない。当たり前だ。
クイズに答えているとき、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。僕たちが生きるということは、金網を大きく、目を細かくしていくことだ。今まで気づかなかった世界の豊かさに気がつくようになり、僕たちは戦慄する。戦慄の数が、クイズの強さになる。”
“気がつくと、クイズの外でも「恥ずかしい」と思うことがあまりなくなっていた。クイズも現実世界も同じだ。なんでもやってみるに越したことはない。誰かに笑われたって構わない。恥ずかしいという気持ちのせいで自分の可能性を閉ざしてしまうことの方がもったいない。”
“クイズが僕を肯定してくれていた。君は大事なものを失ったかもしれない。でも、何かを失うことで、別の何かを得ることもある。君は正解なんだ──クイズが、そう言ってくれているみたいだった。"
"クイズに正解するということは、その正解と何らかの形で関わってきたことの証だ。僕たちはクイズという競技を通じて、お互いの証を見せあっている──そんなことを考える。”

