佐々木朱鷺 "文庫版 姑獲鳥の夏" 2025年7月15日

文庫版 姑獲鳥の夏
去年の冬あたりに読んだ。 推理小説として面白いのは言わずもがなだろう。 序盤の衒学的な語りが凡て後々ちゃんと効いてくるし、シリーズ全体に効いてくるのが素晴らしい。中禅寺の語りに一つも無駄なものは無い。 風刺するでも讃歌するでも無しに中立で世界を見ているが、感情を取り払いきれず、人間の哀しい性を見つめる、京極夏彦作品特有の優しげな目線がとても良い。 衒学語りをしている序盤の中禅寺は、一人の人間としてでは無くただの物語の柱として見ていたが、事件が解決に近づくにつれ人間くささが露出していくのが好きだ。魍魎の匣からは一気に人間らしくなる。これだけ抱えて生きていく中禅寺はきついだろうなと再読するたび思う。
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