
読書猫
@bookcat
2025年7月15日

私の消滅
中村文則
読み終わった
(本文抜粋)
“「あなたは……人を傷つけないコミュニケーションに、長けてますね」
私は和久井を見、そう言葉を出していた。
「とても気を遣う人だ。……でもそれは、……小さい頃からの、習慣であることが多い。たとえば両親の仲を取り持とうとした習慣……。だから、……すみません。今のは褒め言葉じゃありませんでした」
私の言葉に、和久井がわずかに微笑む。細い目をさらに細めて。
「いえ、私もあなたがさっき言ったように、世界に距離を取って生きてきました。……だから、もし私が本当に気を遣う人間なのだとしたら、それはそのまま、世界に対する壁なのかもしれません」”

