
堺屋皆人
@minahiton
2025年7月16日

死んだ山田と教室
金子玲介
読み終わった
audible
再読
2025年
ミステリ
青春のすべてを賭けた<初恋>みたいな真っ直ぐな友情に心が震えた。
初読は『mephisto 2023特別号』で。
Audibleにて再読。
まず、奇抜な設定がこれぞメフィスト賞!って感じで良い。
文体は軽快でさくさく進む。
男子校のおバカなノリに笑わせられ、特に誕プレ大会の和久津君からのプレゼント再生のくだりは腹が捩れるかと思った。(Audibleで再読した時の破壊力よ)
人によってはこのノリ(下ネタとか)についていけなくて脱落したという声も聞くけど、さすがにメフィスト賞ですよ。ずっとこのノリなだけじゃないですから。
以下はネタバレ。
序盤でしっかり文量取って二Eの仲の良さを描写してあるから、学年が上がったり卒業したりしていくクラスメイトと、時間が止まったままの山田君との対比が切なくて、でも妙にリアルで、だから悲しくて……。
その取り残されていく山田君をずっと大切に思っている和久津君のストイック過ぎる頑張りと、二人が友達になるきっかけが次第に明かされていく後半は、軽い文体に反して心がギュッとなる。
教室という空間の息苦しさに自分も覚えがあって、山田君にも和久津君にも共感してしまう。
和久津君が再び学校に戻ってきて、また話ができるようになっても、お互いにお互いがコイツだけ(山田君は状況的に、和久津君は精神的に)だという状況でも、お互いの立場や気持ちが想像できていなくて、微妙にすれ違っているのも辛い。(特に山田君側からしたら、頑張ってるのは解るけどあまりにもだよ……)
一目惚れみたいな出会いからずっと一緒にいられたらと願った相手を一度失って、奇跡的にまた戻ってきたんだから二度と手放したくないと思ってしまうのは仕方ない。
そうなると、もう友情とはいえなくて、エゴだし、執着でしかないけれど、それでも、自分を救ってくれた相手を救いたいから手放す決意をしたのは、偉いし凄い。
その描写の熱量に読者の瞼も熱くなる。
死の真相を最初から知っていたことや、今までの行動が繋がる部分は、ミステリ的なオチとしても満足。(あの爆笑回の裏でそんなことを……)
メフィスト賞は必ずしもミステリである必要は無いとはいえ、そこは期待してしまうので。
ラストがタイトル回収的なのも好み。
サクッと終わるので、余韻がエグいというか感情の行き場に困るw
後日談は知りたいという気持ちと、この余韻がこの作品らしさ、という気持ちの両方あるので、他のメディアミックスがあるならどうなるのか期待。
2周目を読むと、冒頭のインタビュー(?)が、どれが誰のコメントなのか解るのも味わい深い。
そして、Audibleで気づいたけれど、mephisto版と単行本で微妙にコメントの順番変わっていたり、特に和久津君と思しきコメントが違っていて、単行本版での動揺でぐしゃぐしゃのコメントの中身はこう言いたかったんだなってmephisto読み返すと解るし、結末読んで二人の関係性知った後だから胸に刺さる。
けど、単行本で修正された方の、このぐしゃぐしゃのコメントしかできないのが嗚咽まみれで答えている感じがして良い。
生かされてきたんだよね。一緒に生きたかったよね……。
あと、本当Audibleで再読して良かった!!
前半めちゃくちゃ面白かったし、後半は紙で読んだ時には堪えた涙が決壊しました。
朗読の方、お疲れ様でした!

