アキの本棚 "私の頭が正常であったなら" 2025年7月17日

私の頭が正常であったなら
7/15〜7/17 読了 8つの短編が収録された作品集。そのどれにも“死”が付き纏い、それを乗り越える者、受け入れる者、そして書き下ろしの“死後の世界の祝福”——短編集でありながら、一冊を通して“死”と向き合う構成になっている。 【世界で一番、みじかい小説】 理系の妻と主人公にしか見えない、サラリーマンの幽霊の“正体を暴く”夫婦の話。 【子どもを沈める】 高校時代にいじめ、自殺した同級生にそっくりな娘が産まれてしまい、葛藤を抱えながら生きていく母親。 【トランシーバー】 東日本大震災で妻子を亡くした主人公が、生前の息子と遊んでいたトランシーバーからの“幻聴”を通じて前を向いていく話。 【私の頭が正常であったなら】 DVやモラハラが原因で離婚した元夫が、自分の目の前で娘とともに心中。心を壊しながらも、その出来事をきっかけに1人の少女を救い、少しずつ前に進んでいく。 この4作品が特に心に残った。絶望の中に見出すかすかな光や、人には理解されないかもしれないけれど、当人にとっては不思議でかけがえのない体験——そうしたほんのり感が好きな方におすすめ。 “死”にまつわる描写は多いので、そのあたりに耐性のある方はぜひ。
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