monami "無職、川、ブックオフ" 2025年7月16日

monami
monami
@kiroku_library
2025年7月16日
無職、川、ブックオフ
読みやすく、かつ心に深く突き刺さるエッセイ。なので、ここぞという時に読むぞ!と決めて、読みかけのまま眠らせていた。 そしてここ数日、サルトルの『嘔吐』と併読し、ほぼ同時に読み終わった。 どっちも登場人物は、孤独だし働いてないし暇してるけど、考えてることとかは本当に全然違う。 サルトルの『嘔吐』は、読みながら文字が上滑りして、気づくと目で文字を追いながら(買った鶏肉、どう調理しよう)とか(休みの日何しよう)とか余計なことを考えてしまうのだが、『無職、川、ブックオフ』はそんな間も無く没入した。 なんでこんなにしみじみ突き刺さるのだろうと考えると、それはやはり人間の「停滞」がきちんと描かれているからだと私は思う。 人間はどうしても物語を好む生き物で、進歩とか成長とかをさも当たり前のことであるかのように捉え、振る舞うし、それ以外の価値を認めなかったりもする。 けれど実際のところ、人間は「停滞」するし、それはとても自然なことだ。ただ、みなが起承転結のある物語しか受け付けないせいで、人は「停滞」を恥ずかしがるようになるし、「停滞」は語るに足らぬもの、つまらない話としてレッテルが貼られる。 だから、この本でまっすぐに率直に「停滞」をえがいてくれたことがとても嬉しかった。自身の何もできなかった日々を思い出した。それを懐かしく思えた。浪人時代通った図書館のある駅、就活うまくいかなくて憂鬱なまま寝転んだ実家のベッド。そんなものが、もう戻れない、一つの情景として、私の心を揺さぶった。 こういうものを求めてた!と全力で言いたい。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved