はなつめ "グロテスク(下)" 2025年7月18日

はなつめ
はなつめ
@hanatsume
2025年7月18日
グロテスク(下)
凄い作品だった。 語り手がさも事実であるように物語を書き連ねるけれど、徐々に語り手の悪意が見えてきて、誰の言葉を信じて良いか分からなくなる。唯一信用できるのは、下巻冒頭の検察側冒頭陳述要旨くらいだが、それだって誰かの主観が入っている。 人がアイデンティティを見失い、壊れていく様をまざまざと見せつけられた。それは環境のせいでもあり、己のせいでもある。上巻ではひたすらに「馬鹿」と称されていたユリコが一番己を知っていたという皮肉。 他人軸でものを考え中身をなくすとどうなるか、を擬似体験できる良書だった。感情移入できるということは即ち私自身にも他人軸でものを考えているきらいがあるということ。 人間は決して自分のことを客観視できないけれど、そのことをはっきりと突きつけられた。 学生の頃の自分に読ませてみたい、とも思った。
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