グロテスク(下)

27件の記録
- はなつめ@hanatsume2025年7月18日読み終わった凄い作品だった。 語り手がさも事実であるように物語を書き連ねるけれど、徐々に語り手の悪意が見えてきて、誰の言葉を信じて良いか分からなくなる。唯一信用できるのは、下巻冒頭の検察側冒頭陳述要旨くらいだが、それだって誰かの主観が入っている。 人がアイデンティティを見失い、壊れていく様をまざまざと見せつけられた。それは環境のせいでもあり、己のせいでもある。上巻ではひたすらに「馬鹿」と称されていたユリコが一番己を知っていたという皮肉。 他人軸でものを考え中身をなくすとどうなるか、を擬似体験できる良書だった。感情移入できるということは即ち私自身にも他人軸でものを考えているきらいがあるということ。 人間は決して自分のことを客観視できないけれど、そのことをはっきりと突きつけられた。 学生の頃の自分に読ませてみたい、とも思った。
- 夏しい子@natusiiko2025年3月7日かつて読んだ上巻のユリコの手記が出るまで、お姉ちゃんは大人しくて真面目なしおらしい女性だと思っていた。 ユリコの手記を読んだ後からはお姉ちゃんの毒気が凄すぎて、「お姉ちゃん不幸になれ」と思いながら読んでいた。 そして和恵に対しても同じだった。 「もっと不幸になれ」と。 だけどそれは違うと分かってきた。 私が望んでいるのは、お姉ちゃんや和恵の不幸ではなく 世間からの彼女たちの見られ方に、本人たちが気付いたり 認めたりしてほしいと、それを望んでいたのだと思う。