堺屋皆人 "図書館に火をつけたら" 2025年7月19日

堺屋皆人
堺屋皆人
@minahiton
2025年7月19日
図書館に火をつけたら
図書館に火をつけたら
Minoru,
貴戸湊太
ほろ苦い青春の残り香を感じる、ライトなミステリ。 図書館で火災が発生。 密室状態の地下書庫から発見された遺体は一体誰なのか? 犯人はどうやって、密室を作り上げたのか? この事件を起こした目的は? という魅力ある謎に加え、密室の図面、読書への挑戦状、と、ミステリ好きホイホイな要素満載の一冊。 文章も軽く、人間関係も複雑では無いので読みやすい。 図書館の裏側的な豆知識もふんだんに織り込まれ、図書館好きとしてはニヤニヤできる。 消火作業で濡れた本の復元の場面は、震災の津波で濡れた本の復元ドキュメンタリーを思い出した。あれと同じ苦労があるのを思うと、フィクション内の司書さんたちを応援せずにはいられない。 主要人物である幼馴染3人の、居場所としての図書館というのも共感できる。 不登校だけでなく、大人になった今も、日常の生活から離れたい時に、気軽に行ける大事な場所でもあるので、利便性や回転率重視の改革をする館長に反発する気持ちもわからないでは無い。 けれど、最後に盲目のおばあちゃんが言っていたように、改革によって蔵書量が増えて点字や朗読CDなどの本が増えたという利点もあったりするので、誰かとっての悪は誰かにとっての善と、保守派、改革派、両方の良さを取り上げてあるのには好感が持てた。 ただ、ミステリとしては、期待し過ぎた感があり、トリック、消去法のロジックともに、「それだけでは厳しいのでは?」と頭に浮かぶ点も。 それと、主人公の職業は警察ではない方が良かったんでは? と思うほど、推理も捜査もユルイので、「それはちょっと……」という感想を抱かせてしまった。 とはいえ、筋は通っているので、作中で指摘されていない以上、納得できる結末ではあるし、上手くまとまっていて、綺麗なラスト。 幼馴染3人の関係性やテーマ的に、小中学生に読んでもらいたい話。 夏休みの読書にもオススメ。
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