
saeko
@saekyh
2025年7月20日

汝、星のごとく
凪良ゆう
「わたしは愛する男のために人生を誤りたい。」
金色の箔押しが美しい特装版。本屋で序盤を立ち読みして、夏の夕暮れの表現が美しく、この季節にぴったりかもと思い購入。
読後感は、よくも悪くも少女漫画のようだなあ、という印象だった。心に傷を持つ者同士が惹かれ合い、ままならない出来事に翻弄されながらも、長い時間をかけて互いへの愛を育んでいくその過程と結末が、繊細な筆致で描かれている。
物語の根幹には、どんな環境にいようとも、周囲に後ろ指をさされようとも、自分の意思で選択して生きていくしかない、愛とは決断である。というメッセージが、もがき苦む登場人物たちへの慈愛と、他者の苦しみを揶揄して軽率に消費する大衆への至諫のこもった目線で存在しているように感じた。
物語がテンポよく進んでいくので、次になにが起こるのかが気になりぐいぐいと読み進めることができた。
一方で、自分は別れた相手との未練を長年断ち切れず引きずり続けるというのがなんとも不気味というかロマンチックに美化できることではないよな…という思想の持ち主のため、終盤のドラマチックな展開も併せてリアリティがなく、共感・感動するまでにはいかなかった。
状況描写とモノローグの書き分けがうまく、パンチライン的な文章が多いので、登場人物たちがどの経験を通して何を学んだのかがわかりやすく、自己投影しながら読んでいる人にとっては金言と(まさに「一番星」のように)思える言葉がたくさんあるのかもしれない。
近く映画化されるようだが、作中で「ださい」「美人ではない」と表現されている主人公を演じるのが広瀬すずとは………という気持ちになりました