ふじ
@mayu44bk
2025年7月21日

読み終わった
浮世絵、大はしあたけの夕立
絵画にこんな効果をもたらすことのできる画家の技量と感性に、テオは心底驚かされた。
斬新な構図、新鮮な色。細部まで完璧に刷り上げる版画の技術の高さ。そして、画家の風景に対する独特の解釈、卓越した表現力。
浮世絵の特徴
極端に対象物に近づいて描く手法。
極端な遠近感が、小さな紙の上に無数の奥行きをもたらしている。
とにかく、西洋人の目には突拍子もない絵に映ったはずだ。
「なぜならば、私はあなたがたとは違う。『日本人』ですから」
パリで日本人でいることを誇りにしている、しなければならない
フィンセントの描く絵は、激しい感情に彩られている。絵の具が叫び、涙し、歌っている。あんなふうに絵の具そのものに情緒が込められている絵が、いままでにあっただろうか。
フィンセントはフィンセント、自分は自分。2人は別々の人間だ。そんなあたりまえのことが、しかし、テオにはむしろ不自然になっていた。
フィンセントは、まるでテオの半身だった。
フィンセントが追い詰められればテオも追い詰められる。フィンセントが苦しめば、自分も苦しいのだ。
「テオドルス。あなたは、もっと強くならなければいけない」
フィンセントは強い、兄を支えるならもっと強くならなければ、世界に認めさせたいならー強くなってください」
フィンセントの絵は、血を流している。激しく何かを希求して、叫び、傷ついている。
激しい出血。直視することがはばかられるほどの。
「彼は、自らをつけ、自分の作品から幸福を追い出している。鋭いナイフをのどもとに突きつけられるような絵を、いったい誰がほしがるというんだ?いまのままでは、彼の絵を誰も受け入れることはない。だから、テオがどんなに努力をしても、彼の絵を売ることはできないだろう。…残念だが、それが現実だ」
強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば、決して沈まない。
パリはたゆたえども沈まず