
紫嶋
@09sjm
2025年7月19日

くらのかみ
小野不由美
読み終わった
借りてきた
「田舎の旧家の相続問題と、不穏な祟りの噂」という舞台設定は、否応なしに仄暗い事件を予感させてくれる。
事実、この家の後継問題は泥沼化している様子ではあるのだが、この本は元々が子供の読者も想定したミステリーということで、人間の醜さや死の気配の描写は最低限であり、それよりも「力を合わせて真相を暴き、犯人を見つけて親を守ろうと奮闘する子供達の姿」にスポットが当てられている。そういう意味では少年探偵団的なワクワクとした要素も含まれる。
とはいえ、田舎の家特有の迷路のような広大な構造や複雑な家系図を読み解きつつ謎を考察するパートはなかなかに本格的だった。また「いるはずのない子供に扮した座敷童子」というファンタジー要素が一粒加えられることで、独自の空気感が生まれている。
泥沼化した大人の話し合いの詳細が明かされない分、はっきりしない点も多くて物足りなさを感じるという部分もあるのだが、残虐表現などがないため子供がミステリー小説デビューをする際の最初の一冊にはちょうど良いと思う。