はる "夏を喪くす" 2025年7月26日

はる
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@haru_reads
2025年7月26日
夏を喪くす
夏を喪くす
原田マハ
『天国の蝉』 お父さん、お父さん、 もっと真面目に上手く生きていたら、 もっとそばにいて、父親でいてくれたの? 自分よりも、誰よりも、 本当は、娘に幸せになって欲しかった。 ろくでもない人でも、やっぱり範子の父親はあの人だけ。 世界でたったの一人のあの人だけ。 本当は愛に溢れていたんだねお父さん。 今でも娘を想っているんだね。 『ごめん』 自分の犯した事も、 夫の犯した過去も、 すべてを背負って生きていくと、 静かに覚悟を決めたように思った。 夫が、一万二百円を払い続けていた意味を考えると あの場所にいたおかみのためだけじゃないような気がして、 どうしても切なくなってしまう。 『夏を喪くす』 青柳が咲子へ返した願いごと、 咲子が何を願ったのか それはきっと、空と橋と咲子だけしか知らない。 わたしもいつか、 “自分にとっての夏”を喪くす日がくるのだろうか。 そのとき、どんな気持ちで、 わたしは秋を迎えるのだろう。 『最後の晩餐』 ジョセフィンが差し出した右手を、 なぜ麻理子はためらったのだろう。 結局、あの部屋の家賃は誰が払っていたのだろう。 クロがいつか、帰ってきますように。 マリの作るラスト・サバーを、もう一度食べられますように。 4つの物語に、もっと知りたいことがたくさんある。 彼女たちのこれから先のことは 私たち読者は誰も、これ以上知ることのできないもの。 喪失感と余韻を残して 彼女たちの人生のほんの一部を見送りました。
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