
yomitaos
@chsy7188
2025年7月26日

逃亡者は北へ向かう
柚月裕子
読み終わった
@ 自宅
生まれてこの方、ずっと何かを奪われ続けているような、のんべんだらりとした憂鬱を感じていた。あの震災があったとき、また奪われるのかと唖然としたし、惨事便乗型資本主義を始めてさらに奪い取ろうとしてくる「お偉いさん」の姿を見て、奪われる側はずっと奪われる側のままなんだろうかと悲嘆にくれた。
この小説には勝者がいない。カタルシスもない。だれも救われない。逃亡劇というエンターテイメントはあるが、ずっと陰鬱な気持ちで犯人を追い続けることになる。
それでもこの本を読むべきだと思うのは、希望があるから。今ここにあるものじゃなくて、これから先にある「はず」の、希望。人は希望があるなら生きていける。それを、この終わりかけの日本という国でも感じられる。それがこの本の最大の価値だと思った。

