
はる
@tsukiyo_0429
2025年7月25日

踊れ、愛より痛いほうへ
向坂くじら
読み終わった
愛情がおぞましい、鬱陶しいと感じつつも、無意識にそれに縋ってしまっているように思えた。
抵抗していても、望んでいなくても、その愛情のもとに帰ってきてしまう。
抜け出すことができない。
アンノがテントで暮らしていることも、私にはそう見えた。
家を出ることにしたアンノは、両親に「わたしはもう、旅に出たんだと思ってください」と伝え、実家の庭にテントを設置して生活していた。
アンノ自身は親に頼らない生活をしているつもりかもしれない。
しかし実家の敷地内で暮らしていることは、アンノ自身が親から逃れられていない、自立できていないことを表しているようだった。
あーちゃん(元彼の祖母)とアンノの関係はとても興味深かった。
家族の愛情から切り離された(と思っている)二人は、友情を育んでいるように見えてそうではなく、ただこのときを一緒にやり過ごしているだけのような関係に見えた。
ともに過ごした時間は多かったかもしれないが、二人の間に愛情はなかったように思う。
アンノのバレエが忙しいしお金がないからと、アンノの母親は生まれるはずだった子どもを堕した。
その来るはずだった妹を、アンノがあーちゃんと弔う場面がとても好きだった。
遺影の代わりに自身の幼少期の写真を置いたアンノは、まるで昔の自分と決別しようとしているように見えた。
アンノの“頭が割れる”場面が、強く印象に残っている。
自分ではどうにもできないような感情が溢れ、激しく揺さぶられ、割れているから外のものが簡単に入ってきてしまう。
そのどうしようもない激情がよく表れていて好きだった。
.
そのとき、足もとからふたりを見上げていたアンノの頭は、もともとそうなることが準備されていたみたいに、てっぺんからパカっと割れた。ひび割れからは脳がもりもりあふれだし、アンノは思った。ぜんぶ出ちゃう。そうしたらたいへんなことになる。だから、力のこもったお母さんの手を、それでも力いっぱいふりほどいて、あふれるままにしゃべった。
(P7)



