踊れ、愛より痛いほうへ

46件の記録
- 数奇@suuqi2025年8月4日読み終わった雑誌掲載を読んだので正確にはこの本を読んだわけでは無いのだけれど記録として。素晴らしかった。個人的にもかなりブッ刺さる小説で、これが芥川賞の受賞を逃したことを残念に思う。情動的で勢いのある文体に好みは分かれるかもしれないけれど、「名前をつけられない感情」を表現するための必然的な文体だと思うし、文体を含めて作品の「強さ」を感じる。「怒る」でも「泣く」でもない感情を「割れる」と表現して、主人公・アンノの幼少期から成人までの「割れる」人生を描く。どうしてこんな繊細な感覚を捉えて、言葉にして、物語にできるのか。夢中になって一気読みした。
- はる@tsukiyo_04292025年7月25日読み終わった愛情がおぞましい、鬱陶しいと感じつつも、無意識にそれに縋ってしまっているように思えた。 抵抗していても、望んでいなくても、その愛情のもとに帰ってきてしまう。 抜け出すことができない。 アンノがテントで暮らしていることも、私にはそう見えた。 家を出ることにしたアンノは、両親に「わたしはもう、旅に出たんだと思ってください」と伝え、実家の庭にテントを設置して生活していた。 アンノ自身は親に頼らない生活をしているつもりかもしれない。 しかし実家の敷地内で暮らしていることは、アンノ自身が親から逃れられていない、自立できていないことを表しているようだった。 あーちゃん(元彼の祖母)とアンノの関係はとても興味深かった。 家族の愛情から切り離された(と思っている)二人は、友情を育んでいるように見えてそうではなく、ただこのときを一緒にやり過ごしているだけのような関係に見えた。 ともに過ごした時間は多かったかもしれないが、二人の間に愛情はなかったように思う。 アンノのバレエが忙しいしお金がないからと、アンノの母親は生まれるはずだった子どもを堕した。 その来るはずだった妹を、アンノがあーちゃんと弔う場面がとても好きだった。 遺影の代わりに自身の幼少期の写真を置いたアンノは、まるで昔の自分と決別しようとしているように見えた。 アンノの“頭が割れる”場面が、強く印象に残っている。 自分ではどうにもできないような感情が溢れ、激しく揺さぶられ、割れているから外のものが簡単に入ってきてしまう。 そのどうしようもない激情がよく表れていて好きだった。 . そのとき、足もとからふたりを見上げていたアンノの頭は、もともとそうなることが準備されていたみたいに、てっぺんからパカっと割れた。ひび割れからは脳がもりもりあふれだし、アンノは思った。ぜんぶ出ちゃう。そうしたらたいへんなことになる。だから、力のこもったお母さんの手を、それでも力いっぱいふりほどいて、あふれるままにしゃべった。 (P7)
- 月蟹@mooomnnm132025年7月17日買った前回のデビュー作にして芥川賞ノミネート作品だった「いなくなくならなくならないで」に続いての芥川賞候補作品。 向坂さんの独特のことばの使い方が好きで、前回の作品もとても面白く読めた。 芥川賞とか直木賞とか関係無しにこの著者の作品はこれからも読み続けていきたい!
- どんつき団@dontsukidan2025年7月12日読み終わった詩人である向坂くじらさんの小説第2作。 とにかく"すごいぞくじら"しか出できません。あまりにも夢中になり過ぎたかなんと一日で読み切りました。 あたらしい独特な言葉の操り方は近年稀に見る腕前です。2作続けて小説が芥川賞候補になる理由も納得。 はたして7.16の発表日に何が起こるか? わたしのたいせつな宝物の色紙を見ながら毎日ただ祈るばかりです。
- n@n2025年7月5日読み終わった詩のセンスが小説に綺麗に反映されてる。 繰り返しされる言葉の並びが連繫して意味をなすことで物語が進み、文学になってる。随所で使われる情景描写も独特で癖になった。 以下ネタバレ 始まりと終わりのシーンはバレエではパンシェというらしい。 そして、この話は主人公がなぜあの時あの場所で踊ったのか?という話をずっとしてくれる話。 解釈としては、わたしからアンノが大切にしてきたものへの弔いです。 配達員の仕事を辞めた時に、自分だけいい思いをするようになる人間にはなりたくない、と思った。それは幼い頃からの母からの過剰な愛情というエゴに対する拒否反応からだったんだと思う。結局、友達や恋人といった付き合いの中であーちゃんと出会って、違う愛の形質を知って、救われる結末に進むと思いきや、最後はいつもの理不尽さに葬られてしまう。アンノはたくさんの犠牲を産んでしまったことを抱えて、踊ることを選んだんじゃないだろうか。 個人的に1番好きなセリフは「逆だろ」でした。
- 7235@_7_2_3_5_2025年7月3日読み終わった愛はいいものであるとか、家族だからわかりあえるとか、当たり前のようにいいものとされている事柄に対するアンノの純粋でありひねてもいる眼差しが、ひとびと(読者)が抱えているそんなわけないじゃんを言語化してくれているようにおもう。愛するということは愛するもの以外を愛さないこと、という考えかたにどきっとした。おとむらいの場面がとてもすき。
- 結@yi_books2025年7月2日読み終わったどうしようもできない怒りと後悔、自分を潜在的に責め続け、だからこそ愛を受け取ることに抵抗があるのかなと思いを馳せた。それが懺悔であるかのように。 "無音の唇を薄く開いたまま、アンノは手のひらを広げ、母の手のすぐ下を何度も叩いた。何度目かに手が生地にふれた瞬間、吸いつくようにつかまえられた。"
- yt@yt2025年7月2日読み終わった「ねえ、それじゃ美しくないわ」(p6) 自由に踊るということと。 「誰かが握っている手に力をこめると、握られたほうはかならず握りかえした」(p18) 自由に生きるということ。 家族でも離れてていいし、好きじゃない他人と一緒にいてもいい。 「けれどすべての動きはつぎの動きを呼んだ」(p80) 踊るように、連鎖する動きに身を任せて生きたい。 そして、わたしもメッセージを焼きイモしたい。
- ブックスエコーロケーション@books-echolocation2025年6月28日新刊入荷@ ブックスエコーロケーションブックスエコーロケーション、6月28日(土)オープンしております。19時まで。ご来店お待ちしております。 向坂くじら『踊れ、愛より痛いほうへ』河出書房新社 来たる7月16日に決まる第173回芥川賞候補作が、サイン本で入荷しました。 幼い頃から納得できないことがあると「割れる」アンノは、かつて母のおなかにいたはずの「妹」が自分のせいでいなくなったことを知り、衝撃を受ける。高校生になったアンノは、恋愛を疑い、家庭を拒否して、家の庭にテントを建てて暮らし始めるが――。 #向坂くじら #踊れ愛より痛いほうへ #河出書房新社 #サイン本 #信州 #長野県松本市 #松本市 #本屋 #書店 #古本屋 #ブックスエコーロケーション
- はぐらうり@hagurauri-books2025年6月24日読み終わった芥川賞候補。文藝で読了。 純文学だなあと思う。向坂さんの小説は、カテゴライズするのが難しい。いや、ふさわしいものがあるんだろうけれど、まだ言語化できない。幼い頃のちょっとした感覚を、ずっと覚えているような小説家。 自分の理解を超える出来事があると、「割れる」。人とは違う、そういった体験。自分の似たような経験だと、自分をかわいそうだと思うと左の薬指がジンジンする、というものがあった。30歳くらいでなくなった。 思春期とはまた違う、若さならではの体験が読めるのはこの著者だけのような気がする。面白かった。