
たま子
@tama_co_co
2025年7月27日

小さなことばたちの辞書
ピップ・ウィリアムズ,
最所篤子
読書日記
コラージュ
「この小説は、言語を定義する手法が、私たちをどう定義する可能性があるのかを理解しようとした、私なりの試みである。」ー著者あとがき
エズメがひとつ、またひとつと言葉を集め、喪失や恥に塗れながら、ひとつ、またひとつと乗り越えてゆく姿を見つめる。周りで支えるようにして、ほんとうは同じくらい右往左往とする者たちを見つめる。生きることへの重みとだるさ、時に目を見張る鮮やかさに息を呑み、恐ろしくなり、そして安堵する。
言葉には定義された正しい使い方があるのだと思っていた。いつだって使い方に悩むと辞書を開く。だけど辞書にも載らない話し言葉の存在がある。死語と呼ばれる時代をうつした言葉たち。美しくないという理由で認められず失われていく言葉たち。それらにはそのままでしか表現できない温度や意味があり、ときに誰かの生き様でもある。
エピローグまでたどり着いたところでわたしの涙腺は崩壊し、朝食のパンを齧りながらぼろぼろと泣いた。鼻水を啜り、珈琲を飲んでは泣いた。これから先も長い長い戦いが終わることはないのかもしれない。それでも、ここまでたどり着いたのだ人類は…と思う。
見落とされ、時の中に失われてしまう言葉に耳を澄ますこと。拾い集めて記録すること。そういうあり方が、どの時代にも、今も、いつだって足りていない。だけどそれをやろうとしている人がどの時代にもいて、何百年も先の誰かを救う。わたしにとっての言葉の定義がまたひとつ変わり、この本に出逢えた喜びに浸る。ピップ・ウィリアムズ…どんどん本を書いてほしい。余すことなく読みたい。










