CandidE "月と六ペンス" 2025年7月27日

CandidE
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@araxia
2025年7月27日
月と六ペンス
月と六ペンス
ウィリアム・サマセット・モーム,
土屋政雄
人間喜劇の合間の軽い読み物を求めて『月と六ペンス』。ちなみに、本書を楽しむために同著『人間の絆』を先に読み始めてみたものの、全体の4分の1ほどで挫折と相成り、こちらへ一気にジャンプ。それはそれで意図した通り、語り手の厚みが増して結果オーライ。すなわち、クールな装いに表面化されることのない、ウジウジとした心の内在を察知すること。 で、本作自体は、うん、普通に軽く読めて、よかった。どうよかったかと言われると、ストルーブ夫妻の顛末とストリックランドの家の壁画あたりは人智を超えていて、よかった。その破滅と狂気ね。ただ、服毒物と感染症は、演出としてちょっとズルい気もした。 それと解説にもあったけれど、この時期の特にイギリスの小説に感じられるグローバルな雰囲気、人や資本のダイナミックな移動の痕跡、太陽の沈まない国の香りが散見されるのもよかった。例えばアガサ・クリスティとかにも通じる、あの感じ。 読了後しばらくして、坂口安吾の『夜長姫と耳男』をふと読み返したくなった。
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