
ちさ
@chisa_nemui
2025年7月27日

春のこわいもの
川上未映子
読み終わった
もう5年もたったのか、とあの頃を思い出しながら読んだ。不穏な空気感が美しい文章で表現されていて、すっかり酔いしれてしまった。
未知なる「こわいもの」がやってきて、世界は確かに変わってしまって、自分の生活だって少なからず影響を受け始める。大切なものを失う人さえいることもメディアで目にする。大変なことになっているな、と思う。
それでもどこか自分ごとではないような、遠い世界のできごとのような気がしていたのに、それはじわじわと私の世界にも侵食してきて、思わぬ形で少しずつ色を奪っていく。そんな「終わり」や「崩壊」の気配が迫る息苦しさを強く感じる短編集だった。
どの短編もいよいよこわいことが起こる、その寸前で物語が終わるからこそ、その先に待ち受けるものを想像してしまって、より強い絶望感を味わわせてくる。それなのに描写はどこまでも美しくて、ちょっと脳みそが混乱している……

