
noko
@nokonoko
2025年7月27日

峠(上) (新潮文庫)
司馬遼太郎
買った
読み終わった
心に残る一節
「おれは知識を掻きあつめてはおらん」
せっせと読んで記憶したところでなにになる。知識の足し算をやっているだけのことではないか。知識がいくらあっても時勢を救済し、歴史をたちなおらせることはできない。
「俺は、知識という石ころを、心中の炎でもって溶かしているのだ」
「つらで相手が察せられるまで、自分をそだてろ。大丈夫たる者はみなそうだ。つらで相手の心の機微がわかる」
「愚行いたしますに、人というものが世にあるうち、もっとも大事なのは、出処進退とという四つでございます。そのうち、進むと出ずるは、上の人の助けを要さねばならないが、処(お)ると、退くは、人の力を藉(か)らずともよく、自分でできるもの。拙者がいま大役をことわったのは退いて野に処る、ということで、みずから決すべきことでござる。それをそのようにふるまって帰ったまでのこと、天地に恥ずるところはございませぬ」
「学問を出世のたねにしているやつだ。ああいうやつが世の中でもっとも悪い」
「尊敬するのあまり、おれのきらいな百姓仕事まで手伝うとなれば、これはおべっかさ。尊敬はあくまで醇乎たるべきものであり、おべっかが混じっては相成らぬ。」

