talia "差別する人の研究" 2024年3月23日

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@talia0v0
2024年3月23日
差別する人の研究
差別する人の研究
阿久澤麻理子
「今週気になられている本」にあって「お!」となったので、昔書いた感想を引っ張り出してきました。 差別「する人(側)」を研究している筆者の、部落差別に焦点を当てた本です。部落問題にだけでなく、時代の変貌を遂げだ現代のレイシズムについても、とてもわかりやすく書かれておりおすすめです。  〜〜〜 なぜ差別「する人(側)」を研究するかの理由は、下記の引用が全てに思える。 " 差別とは、「人の属性・特性を理由に、区別・排除を行い、人権の享有・行使を妨害すること」であるが、言うまでもなく誰かの権利の行使を「区別・排除し妨害する」のは、差別「する人」である。この定義は明快で、そこに、差別を受けると当事者に責を帰す思想はない。差別は「する人」の問題なのである。" また差別は、その現れ方・手段も、時代や人権政策の変化によって変容すると筆者は分析する。 具体的には、部落差別は、その「人」に対する差別から「土地」に対する差別へと変貌を遂げた。 部落出身者に対して忌避意識を抱かない人でも、部落の所在地(同和地区)に対する差別や忌避意識があることがアンケートの結果からわかったという。 ここで、部落の実際の所在地情報を開示すること・調べることは、それ自体がアウティングにつながる差別的な行為であると筆者は警告する。 好奇心で部落がどこにあるか調べることは、親族の結婚・不動産購入のために、所在地調べや身辺調査を行うことと同じ行為であると。(だからやっちゃダメだよ!) もう一つの差別の変容として、当事者の犯罪や劣等性を言い立てる「古典的レイシズム」と、差別を受けたり被害を被るなどした当事者が声を上げるだけで「逆差別だ」「不当に特権を得ようとしている」とバッシングする「現代的レイシズム」があると筆者は説く。 ・行政からの特別な扱いを受け、優遇されていると思う ・平等の名の下に過剰な要求をしていると思う ・過度な配慮をしていると思う 「現代的レイシズム」としてあげられる上記の言説が、本書の研究対象である部落だけでなくあらゆるマイノリティ差別で見かける言説だということに本書を読んで気付かされる。 部落差別を解消するための取り組みとして、1969〜2002年の「同和対策事業特別措置法」がある。 私は本書の調査対象となった大阪に住んでいる人間だけれど、上記の学校教育で部落問題を学ぶ政策が終わった後に中高等教育を受けたので、部落、同和問題について何も知らないことを本書で痛感しました。 また、差別の形が時代の価値観や政策によって変化すること、そしてそれらを差別禁止法に盛り込むためには、どのような行為を規制するかを言語化すること、差別する人の研究が不可欠であるという点について学びと発見が多くありました。
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