高橋|往来堂書店 "遠い山なみの光〔新版〕" 2025年7月29日

遠い山なみの光〔新版〕
遠い山なみの光〔新版〕
カズオ・イシグロ,
小野寺健
初読時の感想が新鮮なうちに議論できるよう毎度直前に読み終える平野啓一郎スタイル(芥川賞選考の時の)で臨んでいた読書会であるが、口から出てくる言葉が明らかにまとまっていないものであることが多かったし、自分は平野啓一郎ではないということにも気づけたので今回は早めに読んでみた。前回の読書会から3日、次回までまだ1ヶ月以上ある。どうしてこうも極端なのか。辟易。 実は初めてのカズオ・イシグロ。映画化を控えているという理由で課題作品に選ばれたわけだったが、奇しくもデビュー作とのことでフレッシュな心持ちで読んだ。読みやすく、それゆえに掴みきれない初読だったが、不思議と読後感は穏やか(回収されない/語り切られないものも多いのに)。復興に向かう社会で、過去をすっかり清算したようにみえる人と囚われたままの人、その狭間で決めかねている人。個人の復興とはいつ成されるものなのか。ここは仮の住まいだけれども、じゃあどこに帰れば/進めばいいのか? 逃れられない浮遊感はいつまでも続く──。
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