
阿久津隆
@akttkc
2025年7月9日

ダロウェイ夫人
ヴァージニア・ウルフ,
丹治愛
読んでる
昼食のあとに原稿を書く手伝いをしたヒューとリチャードが帰っていってミリセント・ブルートンが眠気を感じていた。
p.201
そのふたりは彼女と一本の細い糸でつながりながらも(昼食をともにしたのだから)どんどんと離れていった。彼らがロンドンを歩いていくにつれて糸はどんどん伸び、どんどん細くなってゆく。昼食をともにした友人同士は、その後も細い糸によってつながっているのだが、その糸は(彼女がまどろんでいるあいだに)時刻を告げたり教会の礼拝の時を知らせる鐘の音に霞んでゆく。ちょうど一本の蜘蛛の糸が、落ちてきた雨の滴の重みでだらりと垂れ下がってゆくように。そのようにして彼女は眠りこんだ。
そのようにして彼女は眠りこんだ! うっとり。騒々しかった頭が一気に静かになるのを感じる。