
いずみがわ
@IzuMigawa_itsu
2025年7月30日

死に魅入られた人びと: ソ連崩壊と自殺者の記録
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
読み終わった
悪魔に鏡を見せる必要があります。自分の姿が見えないと思わせないように。
これが「この本はなんのため」という問いへの答えです。全ての問題は、妖怪にあります。この妖怪の息の根をたたなければ、私たちがそれに殺(や)られてしまうのです。 p.14
ソ連崩壊後に自死を試みた生存者、または自死者の周りの残されたひとの声を集めたインタビュー集。
「社会主義」国家というイデオロギーのラベルで語るには、あまりに普遍的な苦しみだと思う。変わってしまった社会のあり方と己が信じていたものの狭間で、心が引き裂かれる。この不安定な先行きが見えない世界で、私にとっても決して他人事に思えない。
個人的なことは政治的なこと。自ら死を選ぶという一見とても個人的なことが、こうして見るとかなり社会的なものであると感じる。
ひとつの敵ひとつの祖国があるという幻想に、戦争でどっぷりと浸からせる。女性から働きがいと社会との繋がりを奪い、家庭に押し込める。ある日突然隣人を「あいつらは●●人だから」といがみ合わせ殺させる。
誰が彼を、彼女を殺したのか?それは本当に彼ら自身なのか?
揺れ動いた7月に読めてよかった。たくさんの人がこの声に触れて、今の自分たちこれからの自分たち、あるいは巨大なものに翻弄される他者に想像を巡らせる機会があればいいのにと思う。
群像社さん、今こそ再販してください!!!!
神話がおそれるものはたったひとつ、まだ生きている人間の声です。証言です。最もおどおどした証言さえも、おそれます。 p.11

