死に魅入られた人びと: ソ連崩壊と自殺者の記録

4件の記録
あまぎ@zfch88882026年2月8日読み終わった借りてきたP.108 S氏には建築管理局の経理係をしている、美しい奥さんがいた。息子ふたりには別々にアパートを手に入れてやっていた。自動車も買いあたえていた。そう、なにもかもあったし、S氏はなんでもできた。手に入れる、受け取る、電話する、依頼する、圧力をかける、予算をひきだす。官給の別荘、州委員会のビュッフェでの食料品の注文。しかし、地上百メートルから石畳に身をおどらせたのは、そんなもののせいじゃない。サラミソーセージやイクラのせいじゃ‥‥‥。 自分が追放された、自分が裏切られた。S氏はこれに甘んじることができなかったんです。 P.172 インガは右往左往していたんです。現実と理想の間を一生行ったり来たりしていた。誰かに愛されたがっていた、パンや水のように自分を必要とされたがっていた。強くはげしい愛情を欲しがるあまり、愛をでっちあげ高いところから飛びおりるように、人々に向かって身を投げべったり横たわっていたんです。私たちひとりひとりの心の中には愛情の器があって、それが子ども時代に満たされていないと、一生渇きと癒されない思いに苦しむのです。救いがなく、身を守れません。インガの器には、底のほうにわずかにはいっていただけなんです。おばあちゃんの愛が。 P.192 私は共産主義者として死にたい、ソヴィエト人として死にたい、自分の祖国で。家で自室にとじこもるんです。すると私ら夫婦には、なにも変わっていない、なにもなにもかも昔のままだという気がしてくる。ただ、ドアを閉めて、電話に近づかないようにしなくちゃならないが。テレビにも。 私が共産党に入ったのは前線にいた時で十八だった。たとえ銃殺すると言われたって、党員証を返却するつもりはない。われわれには指導者たちがいた。指導者たちがいた。「前へ、前へ!!」とわれわれに呼びかけていた。そのくせ、自分ら逃げてしまった、ほっぽり出してしまった。あの連中は夜な夜な眠れるんだろうか。自分たちの回想録になにを書いているんだろうか。外国でなにを話しているんだろうか。話してもらいたいものだ、私が松葉杖でテレビをがんがん叩きながら、「私は奴隷だったんじゃない、ちがうぞ。共産主義者だったんだ。兵士だったんだ」とわめいたことを。わめきちらしたんですよ、注射をうたれ、担架で病院に運ばれるまで‥‥‥。 私は共産主義者として死にたい、ソヴィエト人として死にたい。われわれの世代が去るのを待ってください、かつて社会主義のもとで、戦争中に生きていた世代が去るの‥‥‥。
いずみがわ@IzuMigawa_itsu2025年7月30日読み終わった悪魔に鏡を見せる必要があります。自分の姿が見えないと思わせないように。 これが「この本はなんのため」という問いへの答えです。全ての問題は、妖怪にあります。この妖怪の息の根をたたなければ、私たちがそれに殺(や)られてしまうのです。 p.14 ソ連崩壊後に自死を試みた生存者、または自死者の周りの残されたひとの声を集めたインタビュー集。 「社会主義」国家というイデオロギーのラベルで語るには、あまりに普遍的な苦しみだと思う。変わってしまった社会のあり方と己が信じていたものの狭間で、心が引き裂かれる。この不安定な先行きが見えない世界で、私にとっても決して他人事に思えない。 個人的なことは政治的なこと。自ら死を選ぶという一見とても個人的なことが、こうして見るとかなり社会的なものであると感じる。 ひとつの敵ひとつの祖国があるという幻想に、戦争でどっぷりと浸からせる。女性から働きがいと社会との繋がりを奪い、家庭に押し込める。ある日突然隣人を「あいつらは●●人だから」といがみ合わせ殺させる。 誰が彼を、彼女を殺したのか?それは本当に彼ら自身なのか? 揺れ動いた7月に読めてよかった。たくさんの人がこの声に触れて、今の自分たちこれからの自分たち、あるいは巨大なものに翻弄される他者に想像を巡らせる機会があればいいのにと思う。 群像社さん、今こそ再販してください!!!! 神話がおそれるものはたったひとつ、まだ生きている人間の声です。証言です。最もおどおどした証言さえも、おそれます。 p.11


いずみがわ@IzuMigawa_itsu2025年7月18日読んでる群像社さん!!再販してください!!! 『セカンドハンドの時代』に部分収録されているようだけど、やはり全部読みたいので図書館で他館のものを取り寄せてもらった。 つらいので少しずつ。


