読書猫 "犬婿入り" 2025年8月1日

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2025年8月1日
犬婿入り
犬婿入り
多和田葉子
(本文抜粋) “道子は自分の日本語が、坂を駆け下りるように下手になっていくのを感じたが、もうどうにもならなかった。本当に思っていることを言おうとすると、日本語が下手になってしまうのだった。” “小説を開いて読み、それについて書きたいと思って読み、読んでいくうちに何か暗い予感のようなものが、道子の本を抑える両手の指にからみついてきて、道子を下へ下へと引っ張っていくのだった。下の方では、形のない冷たく湿ったからだのようなものが蠢いていた。道子は、その仲間入りをしたくないのだった。したくはないけれども、小説を読んでいると下へ下へと引きずられていって、論文を書くどころの話ではなくなってしまうのだった。“ (「ペルソナ」より) ”なんだか、いつも、ねばつくような感じのする手のひらで、時々、耳をいじったり、もの想いにふけったりしながら、ぐずぐず箸を動かしている利発とは言えない扶希子をみていると、みつこは、よく、苛立ちと似た強い愛情が湧き起こってきて、胸が苦しくなり……(略)」 (「犬婿入り」より)
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