かおり "イデアの影 The shad..." 2025年8月3日

かおり
かおり
@6kaorin5
2025年8月3日
イデアの影 The shadow of Ideas
谷崎潤一郎没後50年記念作品として書かれたという。 谷崎らしさは感じられないが、耽美で退廃的な雰囲気は漂う。いつもの著者作品とは少し毛色の違って近代文学風。 「彼女」のもとを、庭を、夢を、訪れ、去ってゆく男たち。 ハセガワさん、ススムさん、タカヤナギさん、そして夫。彼らの死は夢か現か。 それとも、彼女自身が幻なのか。 影。 見ている、見えている影は。 「神様から命をお借りして、この死というものを体験させてもらう。 そんなツアーを、人生と呼ぶのだ。」 近代文学的な物語を読んでいたはずが、終盤、気づけばやはり独特な森ワールドに足を踏み入れていた。 このつらさ、憂鬱は、生きているからなのだと改めて気づく。死をもって借りた命をお返しする。自分が生きているのは、まだまだ借りが残っているからなのだ。焦る必要はない。ひとつずつ丁寧に、そうっとお返ししてこそ、なのかもしれない。そう思うと、自分のこのツアーも幾分軽く、楽しくなってくるような気がするが、それは妖しい「彼女」の世界に影響されすぎかしらね。
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