
読書猫
@bookcat
2025年8月3日

アレグリアとは仕事はできない
津村記久子
読み終わった
(本文抜粋)
“ミノベは道具や機械が好きだった。彼らは、その特徴を研究し、うまく協調するようにしてやると、どんなに態度の悪いものでもそれなりの範囲での力は発揮してくれるようになる。それは、移ろいやすい人間の気持ちなどよりはよほど誠実なもののようにミノベには思える。“
“だからそうしてそれを口にしてくれなかったんですか。
ミノベは、眉間を押さえてうつむいた。先輩の在り方。物事を悪しざまに言わない、焦らない、どんな時も他の社員の利益を優先させる、ということ。その深層にあった、何か呻きのようなものを、ミノベは聴いたような気がした。まだ手遅れではないんですと先輩に伝えたかったが、彼女はその言葉すら拒んでいるように思えた。”
(「アレグリアとは仕事はできない」より)
“この若い男もおそらく、働くようになるとこういった尊大さはへし折られるのかもしれず、それにはそれの陰気な痛快さもあるが、それを人間全体に当てはめると、本当に人生は劣化していくだけなんだな、とニノミヤは考える。“
(「地下鉄の叙事詩」より)