DN/HP "たのしい保育園" 2025年8月4日

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2025年8月4日
たのしい保育園
『連絡』という一編に、娘を、今抱いているその体を大切に思うと同時に、その体を守れなかったら、無差別的な悪意や敵意を向けられてしまったら、と想像し彼女の死を思い描く、そして現実に、この世界ではそうやってあっけなく命が途絶えてしまうことを思い、その後に見上げた公園の空に高く上がる凧を見て、ガザ地区ラファの難民キャンプの報道思い出す、というシーンがある。 滝口さんの書く小説、文章には明るく軽やかな印象を持つことが多いけれど、このシーンが書かれる数ページにはトーンが下がって重みを感じた。小説は全てそうなのかもしれないけれど、「今」書かなければというような切迫感がある、とも感じていた。 『長い一日』にある「小説というのはそうやって全てを記録できないこの現実を、言葉で書き換えて読んだり話したりできる形にするものなのか」という印象的な一文を思い出す。ともすれば思い出すことが出来なくなってしまうかもしれない父と娘の記憶がそうであるように、このシーンもまさに言葉で書き残し「読んだり話したり」するべきシーンなのだ、という気がした。
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